『∀ガンダム』を全話語ってみる(第50話)

第50話 黄金の秋



脚本:浅川美也
演出:森邦宏
絵コンテ:川瀬敏文・斧谷稔
作画監督:後藤雅巳・菱沼義仁
2000年4月14日放送




-グッと来たセリフ①-

「~今の地球を破壊する必要なんて
何処にもないんですよ!(ロラン・セアック)」


「それがあるんだよ! 
何も変わらない、ただ時が流れていくことに
耐えられなくなった地球人は、

∀を呼び覚ましたんだ! 坊や!
(ギム・ギンガナム)」


「そんなことありませんっ!(ロラン・セアック)」


「だったら! 何故ディアナは地球帰還作戦を始めたのだ!
何故地球人はそれを拒んだのだ!
(ギム・ギンガナム)」


「なぜっ…?!(ロラン・セアック)」


「今までの時代は間違っていたのだ!
人類は闘いを忘れることなど出来はしない!

だから、このターンXですべてを破壊して、
新しい時代を始める!(ギム・ギンガナム)」





-グッと来たセリフ②-

「あなたが戦う力を守ってこられたのは、
ディアナ様をお守りするという、誇りがあったからでしょう!
(ロラン・セアック)」


「その誇りをくれたのがディアナなら、
奪ったのもディアナなのだ! 労いの言葉ひとつなく、
地球へ降りたんだよっ!(ギム・ギンガナム)」




-あらすじ-

ヤコップ、ブルーノ、ハリー、
ポゥらの協力もあって∀を取り戻したロランは

ギンガナムの駆るターンXを
ロストマウンテンに誘いこんでいた。

一方、コレンカプルを操る
コレン・ナンダー軍曹は握り拳を射出する
特殊装備をソシエとメシェーに頼み、

そのまま二人を置き去りにして
彼女たちのカプルを従えて出撃。

また、ターンXの一撃をブリッジに食らった
ウィルゲムはコントロールを失い墜落し、

グエンは一時機械人形の製造工場に
身を潜めてほとぼりが冷めるのを待とうとするが、

アメリア大陸に迫った目の前の脅威に
目を向けることなく、他人事のように今後の
戦略を語る彼にミハエル大佐は呆れ果て、

部下と共に袂を分ける。

そして、ロストマウンテンにて∀と対峙するターンX。
決戦の時は、刻一刻と近づいていた。











-感想-

まず、グッと来たセリフ①なんですけど、
これはある一面では正しいですよね。

むしろ地球人というよりは、
冷凍睡眠を繰り返して“死”というものが
身近ではなくなり、

生物としての活力が失われるかもしれない
ムーンレィスに当てはまるような気がしますけど。

つまるところ、人間の本能のひとつを
封印していたとも言えるディアナに完全なる
正当性は無かったとも言えるでしょう。

続いて、グッと来たセリフ②なんですけど、
ここでようやくギンガナムがディアナを目の敵に
している理由が判明するのですが、

この“擦れ違い”をシリーズ全体を通して考えてみると、
また、別の側面が見えてくるのではないでしょうか。




『∀』の主人公はロラン・セアックですが、
もう一人の“影の主人公”と言ってもいいのが
月の女王ディアナ・ソレルその人でしょう。

時系列順に追っていくと、
かつて地球に降りた際に、ウィル・ゲイムと
恋仲になったものの、

ちょっとした“擦れ違い”でお互いが結ばれる
ことはありませんでした。

その“擦れ違い”を克服しようと、再度目覚めた際に
地球帰還作戦を急がせてしまった結果、

ディアナ・カウンターとの間に“擦れ違い”を
起こしてしまい、フィルたちから造反され、

そして女王を守るギンガナムとも“擦れ違い”の
結果、憎悪の対象として奉られてしまった。

女王たる聡明なお方なのに、平和を願う崇高な精神の
持ち主の女王なのに、些細な“擦れ違い”が
大きな破壊と混乱を生んでしまった。

結局人間は永遠に争いを繰り返し
滅びていくしかないのでしょうか。

「いや、そうではないよ」

という、このような視点が『∀』という作品における
肝なのではないかと思います。




『∀の癒し』には


なににも感動しなくなった世代に人間回帰をテーマにして、
とりあえずの淋しさに鬱屈している世代にあたえるべき
物語にしたいと言われた。(14Pより)



と、おそらくは当時のサンライズ社長からの
企画意図を記されたような一文があるのですが、

それを考えると、第7話で記した


『冨野監督が描きたかったことというのは

様々なシステムに組み込まれて0と1、白と黒、得と損、
などデジタル的な狭い視点に縛られてしまった

人間の持つ多様性への回帰みたいなことなの
ではないかなぁ、』という感想や


第21話で記した


『人の心はそれぞれの受け取り次第だし、
機械も使う人次第だったりして、

それぞれ相対的に見ることで
見逃しがちな隠された可能性を
垣間見ることができるかもしれない、』


という感想に符合するんですよね。
これらの感想に至ったのは根底に上記のテーマが
流れていたからなのでしょう。




とはいえ、これらの要素はひょっとしたら
従来の“ガンダム”ではないのかもしれませんし、
実際その点で放送中に批判もあったかもしれませんが、

第28話


『強大な脅威に対しては、敵味方関係なく
一つになれるであろうという、人間の
善性のようなものを感じますね』


という感想を書いた際には無意識に
“人は分かり合えることが出来る”という
ニュータイプの基本概念を思い出したりして、

『ガンダムを全否定して、全肯定する』

ところの意図することは、ガンダム的でない描写で、
ガンダム的な表現をする、という意味も込められているのかな、と。

と、すれば、『∀』はまごうことなき
“ガンダム”ということになるのでしょう。

面白いのは、従来のシリーズであれば、
全体を通しての終盤やクライマックスでその要素を
感じられるような構成になっているのですが、

本作では、中盤以降、殆どのエピソードで
そのことを感じられたりするので、

一話一話が途中経過を示すだけではなく
きちんそのようなテーマは物語れており、

ひょっとしたら、この辺が、“直球”ということであり、
ガンダムとしては“変化球”ということなのかもしれません。




『∀の癒し』によると、“人間回帰”というテーマは
当時のサンライズの社長である吉井孝幸氏のものなのですが、

冨野監督としてのテーマは

“ただ巡るもの”

としたようです。(18Pより)

このテーマを考えると先の
『ガンダムを全否定して全肯定する』
ということの意味合いもまた変わってきて、

従来のシリーズであれば、ディアナのような
“同じ過ちを何度も繰り返す”という
人類は否定的に描かれて、

戦争を繰り返すことを愚かしく
描いていました。

もちろんそれは間違いではないでしょう。

間違いではないのですが『∀』はそういった
人間の本能のようなものも否定せずに
包括してしまってるのでしょう。

善い悪いではなく、
そうして歴史は、時間は、巡っていくのだと。

そもそも、冨野監督としての企画発端としては、
輪廻転生の物語でタイトルも

「リングオブガンダム」

ですからね。

色々な心境の変化を経て、
『伝説巨神イデオン』

とは、まったく違った輪廻転生の
物語になったのかもしれません。




これで一応、-まえがき-で書いた疑問に
答えを出したつもりなのですが、各話で生じた
疑問で一部投げっぱなしになっている物もありますが、

その辺は結局答えは出ませんでした。スミマセン。

全話視聴して、ホントに月並みな言い方ですけど
『∀』は深いなぁ、なんて思いました。

『∀の癒し』によると、実は放送延長による
二年目の構想もしていたようで(174Pより)

ひょっとしたらそれが
『Gのレコンギスタ』
だったのかと想像してしまうのですが。

そうだったにせよ、そうでないにせよ、
予め『∀』を全話視聴した後であれば、

『Gレコ』の印象もまた別の物に
なっていたかもしれません。




まだ記事を更新してから間もないこともありますが、
『∀』関連の記事はその人気と同じなのか
あまりアクセス数が伸びないんですよね。

やっぱり、ヒゲの印象や、今までと全く異なる
世界観に拒否反応が出てしまうんでしょうね。

かつての『Z』もそんな感じでしたが、
『Z』同様に、いつの日か再評価されることが
来る日を心から願っています。

ラストシーンは『∀の癒し』によると、
第42話のセリフにあったように本来の寿命を
全うするべくディアナはロランに

自分を“看取って”欲しくて傍に置いたそうです。

それは、ディアナの本当の初恋の相手が、
ロランのような少年によく似ていたからかも、
とのことです。

最後に、『∀の癒し』より
そんなラストシーンを演出した冨野監督の
一文を引用して終わろうと思います。



生きているひとは、こんなもので
生きているのだとおもうのだ。

だから、日々の情けを大切にしたい。(289Pより)








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